オーストリア・ウィーン 「日欧宮殿芸術祭2019」開催報告

オープニングセレモニーに集った日独芸術家と来場者たち。宮殿の大広間は、芸術への熱気で埋め尽くされた(2019年)。

日欧芸術文化の新たな宮殿を展望する『日欧宮殿芸術祭2019』が、シェーンブルン宮殿 オランジェリー(オーストリア ウィーン)で開催された。本展は、日本オーストリア友好150周年認定の交流事業であり、また日欧宮殿芸術協会によるオーストリアでの初展覧会となる。

オーストリアは、言わずと知れた芸術大国であり、アマデウス・モーツァルトをはじめとする優れた音楽家はもちろん、グスタフ・クリムトらウィーン分離派に代表される画家など、総合的に優れた芸術家を数多く輩出している。

その背景にあったのが、庇護者として芸術を寵愛したハプスブルク家の圧倒的な威光である。中世ヨーロッパにおいてその大部分を勢力下に収めたハプスブルク家は、マリア・テレジアら歴代の当主が芸術に自らの財を惜しみなく注いだため、彼らの下にはその時代を代表する優れた芸術家や、当時の傑作が集うこととなった。当然ながらハプスブルク家の住まう邸宅は当代一の芸術宮殿となったわけだが、それこそが今回の会場となるシェーンブルン宮殿である。

ハプスブルク家の夏の離宮として愛されたシェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の夏の離宮として愛され、中でも幼いモーツァルトがマリー・アントワネットに求婚した伝説は、今も人々の語り草となっている。時代を経て、再び芸術の宮殿に現代の芸術家たちが集うことには、芸術家ならずとも特別な思いを抱くのは当然のことだろう。

今回の出品作は、ジャンルの枠を超えて選出された日本の現代芸術家の作品287点、オーストリアアーティストの芸術作品33点に加え、日欧宮殿芸術協会の一員としてマルタの芸術界を牽引するジョゼフ・バルバラ氏の作品「Japanese Beauty」が花を添えた。しかし注目されたのは日本の現代芸術・文芸の作品で、ロココ調の宮殿とのコントラストは、日本芸術の新たな印象となって人々の目を惹きつけていた。実際、会場は連日にわたって多くの来場者が押し寄せ、日本の伝統と現代を結ぶ芸術作品に数えきれないほどの眼差しが注がれた。

また現地54日に開催された記念セレモニーでは、墺日協会ディートハルト・レオポルド会長、ウィーン13区のクリスティアン・ゲルツァベク区長代理、在オーストリア日本国大使館代表として岩渕系センター長などそうそうたる顔ぶれが来賓として出席。さらにウィーン交響楽団メンバーをはじめとして、音楽の本場オーストリアで活躍する音楽家たちが素晴らしい演奏を披露し、会場中が感嘆する一幕もあった。

「日欧宮殿芸術祭2019」は55日に無事閉幕を迎えたが、日本とオーストリアの芸術交流はまだ始まったばかりである。今年の10月には、早くも池袋の東京芸術劇場にて日本、ドイツ、そしてオーストリアによる3カ国合同展が決定している。芸術の本場ウィーンで日本芸術家とその作品が象徴的な活躍を果たしたことで、次の時代に向けて明るい未来が切り拓かれたことは間違いないだろう。

会場となったシェーンブルン宮殿